子どもが出血したり大泣きしていたりすると、親は動揺してしまいますね。
しかし、その様な時だからこそ、落ち着いて対応しましょう。
息子さんは頭から出血していて、その原因が滑り台からの落下だということがはっきりしています。
公園には、登り階段が2~3段の幼児用滑り台が設置されている所もありますが、幼稚園児でしたら6~8段ほどある滑り台だと考えられます。
従って高さは約1.5~2メートルの所からの落下だと推測できます。
その時、親は何に注意し、どのような行動をとるのが最善でしょうか。
今回は、何科を受診すべきかに加え、病院へ行くまでにしておかなければいけないことも解説します。
目次
倒れている子どもを見て、1番に親がすべきこと
高い所から落ちて、しかも頭からの出血。質問者さんは、凄く慌てたことでしょう。
高所からの落下ですから、今すぐ病院へ行くレベルです。
が、診察を受ける前に次の事に着目してください。
親として1番の心配事は「脳に損傷がないか」だと思います。
落ち着いて下の7項目をチェックしてください。
- 名前を呼んでも返答がなく、反応が乏しい
- ぐったりして、動かない。
- 目がうつろで、視線が定まらない。
- ひきつけ(けいれん)を起こしている
- 意識がおかしい
- 手足の動きが悪い
- 嘔吐(吐き気)がある
これらのうち、1つでも兆候が見られれば、打撲により脳に障害が起きていると考えられます。
特に①は重要。すぐに救急車を呼び「救急外来」で診てもらいましょう。
もし近くに「脳神経外科」があれば、そちらでもOKです。
すぐに検査をしてもらってください。
頭部のCT検査もしくはMRIを撮り、内出血(頭蓋内出血)などをチェックしてもらう必要があります。
次に気になるのが頭からの出血です。
覚えておいてほしい事は、子どもの頭の皮膚は、薄くて柔らかいこと。
また頭皮は最も血管が多いので、頭の皮膚が切れると出血しやすいです。
親は、子どもの顔や服に血が垂れ始めると、大出血なのでは?と慌ててしまいますが
出血しているからといって程度がひどいというわけではありません。
さて、救急車を待つ間、親は圧迫止血を試みましょう。
圧迫止血とは、傷を覆うように清潔な布を当て、傷の周囲を強く抑えることです。
この手当で、出血を最小限に防げます。
圧迫止血のポイントは3つあります。
- 出血している所を正確に押さえること。
なんとなくこの辺り、と広域に押さえるよりも、的を絞り的確に押さえた方が速く止血できます。 - 押さえる目安は10分ほど行うこと。
血小板と凝固因子が働き、固まるのに2~6分ほどかかります。
1~2分で手を離してしまいがちですが、しっかり時間をかけましょう。 - 出血部分は心臓より高い位置にすること。
心臓より高い位置にする理由は、重力に逆らうようにすれば出血するスピードが遅くなるからです。
頭は心臓より高い位置ですから安心ですが、もし脚の出血ならば、子どもを寝かせ脚を高くしてください。
受傷後、医師の診察を受け、CT検査等の結果が良好だったとします。
その後は医師の指示のもとで、経過観察となります。
帰宅後、24時間以内にふらつくといった症状が出なければ、頭はほぼ大丈夫と考えられます。
ただし、しばらく経ってから脳の表面にじわじわと血が溜まることもありますから
2~3日は子どもの様子をよく観察してください。
その間は入浴や運動をできるだけ避け、静かな生活を心掛けましょう。
3日ほど経過し、何も症状が出なければおおむね安心といえる状態です。
病院へ行くほどでもない状態の時
子どもの様子を見て、先の①~⑦にあてはまる状態ではなかったとします。
たとえば、目をしっかりあけている。
ママ(保護者)の名前を呼べている。
嘔吐はない。
大泣きしているものの機嫌は悪くない。
すぐオモチャで遊ぼうとしている、など普段とあまり変わらない様子が見られるならば、経過観察で大丈夫です。
心配ならば、かかりつけの小児科医に相談し、様子を診てもらいましょう。
ただし、頭からの出血は気になりますから、応急手当を行う必要があります。
その方法ですが、まずは流水で洗浄します。消毒や軟膏を塗るよりも
水で流す方が異物を取り除けるため効果的。その後に圧迫止血します。
浅い傷での出血ならば、10分ほどの圧迫止血でほぼ止まります。
(止まらない時は、やや深い傷なので脳神経外科へ。ステイプラーで処置してもらいましょう)
圧迫止血後は、公園での遊びをやめ、家に帰り2時間ほど子どもを休ませましょう。
眠くなれば、そのまま眠らせても構いません。
ただし、寝ている間も目は離さないでください。
水分を取りたがるようなら、水やリンゴジュースなどを飲ませてください。
2時間経っても吐かなければ、食べ物の開始もOKです。
もし吐いてしまったら、吐き気が治まるまでの食べ物はNGとします。
頭痛を訴えてきたら、市販薬の小児用痛み止めを考えてしまいますが、使用は避けてください。
あまりに頭痛がする時は、小児科(かかりつけ医)を受診しましょう。
静かな生活を心掛け、2日経って子どもの様子に問題がなければ、普通の生活に戻って大丈夫です。
ただし、2日間の経過観察中、下記の事が起こるようなら、要注意!
すぐさま脳神経外科を受診してください。
- 顔色が悪い
- いつもと受けこたえが違う
- ボーっとしている
- 元気がない
- 熱がなく下痢もしていないのに、嘔吐を繰り返す
ポイントは「いつもと違う」「違和感がある」という子どもの状態です。
何かおかしいと感じたら、病院へ行ってください。
さらに下の症状が出てきたら、脳神経外科ではなく、救急外来へ直行してください。
- 子どもの記憶が30分以上飛んでいる
- 自立歩行ができなくなっている
- けいれんの症状が起きた
- 意識がはっきりしない
親が医師へ伝えるべきこと
救急で病院へ運ばれたた場合でも、自力で病院へ行った場合でも、親はこの2点を医師にしっかり伝えましょう。
①落下時の状況説明
まずは時間。負傷したのは何時何分頃だったのかを伝えます。
次に様子。
たとえば、頭から落ちた、体左側で地面に落ちた、というように、状況を出来る限り詳しく説明します。
落ちた状態。
何メートルの高さから落ちたのか。
加えて落下地点の状態も説明しましょう。
芝生だった、砂利だった、アスファルトだった、といった状態です。
砂利だった場合、ガラスの破片が混入していることが考えられますし
芝生とアスファルトでは衝撃度が違います。
医者が判断しやすいように、覚えている限りのことを伝えましょう。
②子どもの説明
まずは年齢。子どもは何歳何か月であるかを伝えます。
次に基礎疾患。子どもに基礎疾患がある場合は必ず伝えます。
たとえば、呼吸器系の病気を持っている、血液の病気がある、先天性の異常がある、といったことです。
基礎疾患の有無で緊急性が変わりますから、必ず伝えてください。
最後は予防接種。
4種混合ワクチン(もしくは3種混合ワクチン)を打っているかどうかです。
このワクチンは破傷風という細菌感染症を予防できる効果があります。
ワクチンを打っていれば感染のリスクが減少します。
医師には多くの情報を渡しましょう。
まとめ
高所からの落下と頭部出血。この場合は「救急外来」です。
あまりに子どもの様子がおかしいようなら、すぐ救急車を要請してください。
それほどでもない時は、近所の「脳神経外科」へ駈け込んでください。
CT(コンピューター断層撮影装置)検査を使えば、頭の中が鮮明にわかります。
骨折のほか、脳内の出血や損傷などがわかり、命の危険な状態ならば、ただちに手術が行われます。
CT検査の結果、問題なしと診断された時は、後の数日間は、医師の指示に従った生活をしましょう。
病院へ行くほどでもない時は、2~3日ほど家の中で静かに過ごさせ、様子をチェックします。
心配ならばかかりつけ医(小児科)に相談してください。
ところで、CT検査ではX線を使用するため、放射線被ばくに不安を感じる方がいるかと思います。
子どもは成人よりも放射線への感受性が高いと言われていますが、身体が小さい分
撮影に必要なX線の量も少なくなります。
従って、CT検査でのX線による影響を心配する必要はほぼありません。
それでも不安に感じる方は、CT検査前に医師から直接話を聞き、納得した上でCT検査を受けるようにしましょう。
子どもが怪我をするのは、成長していく上で自然なことです。
逆に言えば、まったく怪我をしない子どもなどいません。
子どもが怪我をして親(保護者)が慌てたり不安に思ったりすると
子どもは親の感情を読みとり「自分が悪いことをした」と罪悪感を持ってしまうことがあります。
そうならないためにも、親は落ち着いた判断と、子どもへの優しい言葉かけをお願いします。