感染症と戦う令和時代「感染管理認定看護師」の資格を取得して、感染予防のリーダーになろう!【後編】

新型コロナウイルスが流行する中、一番注目を集めている「感染管理認定看護師」は、どのような仕事を行うのかを前編で紹介しました。

感染症と戦う令和時代「感染管理認定看護師」の資格を取得して、感染予防のリーダーになろう!【前編】

後編では、実際にその資格を取得したいならば、どのように行動を起こせばいいのか。

また、どのような勉強を行なえばいいのか、などを解説していきます。

感染管理認定看護師になるメリット

1番の魅力は、看護師としての基礎スキルが向上することです。

もともと認定看護師の教育自体に看護師としてのベースアップ教育が組み込まれています。

その中の1分野である“感染管理”の知識を深く学ぶことで、高みを目指すことになります。

感染管理認定看護師の教育では、「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」と「感染に係る薬剤投与関連」の2区分も履修します。

この特定行為研修を受けることで、医師の指示書に指定された症状内で、医療行為を自己判断で行えるようになります。

つまり、医師への報告と指示受けがなくても、より適切なタイミングでの処置が可能になるのです。

また、感染対策の立案や指導を行える立場にもなります。

それゆえに、病院全体の感染症管理を任されることもあるでしょう。

2つめの魅力は、院内で顔が広くなることです。

感染対策は病院に関わるすべての人が対象になります。

つまり、自分が働く部署だけでなく、普段あまり関わりのない部署の方々とも協力する必要があります。

自分が院内を歩くだけで、他の科の医師、事務職の方々、清掃業務の方々などから、声を掛けられたり、感染に関する相談をされたりします。

頼りにされるのは、嬉しいことです。

相手との距離が縮まったと感じられるでしょう。

3つめは、他の病院や施設で働く看護師と交流が持てることです。

感染管理認定看護師として、感染関連の研修会や病院関連の会議に出席することが増えます。

その際に、他の施設で働く感染管理認定看護師の方々と、情報を交換したり、学びを深めたり、意識を高め合ったりします。

交流できる仲間がいることが喜びに繋がります。

4つめは、給与が上がることです。

といっても、すべての病院で必ず、というわけではありません。

施設によっては、感染症管理認定看護師の手当を用意しているところもある、残念ながらないところもある、というのが現状。

手当が付けば嬉しいのですが、多くのスタッフや職員、患者から<頼もしい存在だ>と認められることが、何よりのご褒美ではないでしょうか。

感染管理看護師になるまでの道のり

感染管理認定看護師になるためには、5年以上の実務経験が必要です。

また、その5年のうちの3年以上は認定看護分野での実務研修が求められます。

感染管理認定看護師を目指すならば、感染管理分野の実務研修が必要となるわけです。

ここまでが大前提です。

大前提の条件をクリアしていたとして、話を進めます。

次は指定された教育機関で授業を受けることになります。

しかし、誰でも受けられる訳ではありません。

入学試験があり、合格した者だけが教育機関に通えるのです。

合格した後は、教育機関で必要な時間数の講義を受けます。

最後は認定審査に挑み、その審査に合格すると、晴れて感染管理認定看護師の資格取得! となるわけです。

感染管理認定看護師の教育が受けられる教育機関は、すべての都道府県にはありません。

出願を受け付けているのは、以下の所です。

 

出願受付一覧

北海道

北海道医療大学 認定看護師研修センター

東京都

日本看護協会 看護研修学校

神奈川県

神奈川県立保健福祉大学 実践教育センター

北里大学看護キャリア開発・研究センター 認定看護師教育課程

栃木県

獨協医科大学 地域共創看護教育センター

群馬県

高崎健康福祉大学看護実践開発センター 認定看護師教育課程

長野県

長野県看護大学 看護実践国際研究センター

石川県

石川県立看護大学附属 看護キャリア支援センター

三重県

三重県立看護大学 地域交流センター 認定看護師教育課程

兵庫県

日本看護協会 神戸研修センター

宮崎県

宮崎県立看護大学 看護研究・研修センター

福岡県

国際医療福祉大学 九州地区生涯教育センター

沖縄県

沖縄県看護協会

他に山口県の山口県立大学 看護研修センターでも行っていましたが、2021年度は休講したようです。

今後再開する可能性もありますし、他の県で教育機関を増やそうとしている動きもあるようです。

いずれにせよ、最新情報は日本看護協会のHPに載りますので確認しましょう。

開講月は、それぞれの教育機関によって異なります。

4月のこともあれば、5月、6月、7月、9月といった様にバラバラです。

スタートは4月と思いこまず、正しい情報を入手してください。

ここからは、具体的にイメージができるように詳しく書いていきます。

『日本看護協会の看護研修学校(東京)』が募集した、特定行為研修を組み込んだB課程教育の2022年度を例にとり、紹介します。

修行期間は1年。

感染管理学科の募集は30名でした(他に、クリティカルケア学科30名、皮膚・排泄ケア学科30名、糖尿病看護学科30名、認知症看護学科30名も同時募集)。

2022年4月上旬に入学式を行い、7月まではeラーニング授業、8月~10月頃集合教育、10月頃~12月臨地実習、2023年1月統合演習・修了試験、1月~3月課課題学習・補講、3月卒業式です。

教育機関で授業を受けられるための入試試験は2021年11月10日と11日に(いずれか1日)に行われていました。

ちなみに願書受付は2021年9月1日~9月29日。

合格発表は2021年12月16日。

教育機関によって願書受付も試験日も入学式も異なりますから、受講する気持ちのある人は、意中の教育機関を詳しく調べてください。

試験内容は、専門科目の筆記試験+小論文+10分程度の面接でした。

試験内容ですが、専門科目は

  • 感染症の病態・生理・治療および診断に関する基礎的知識を問う
  • 感染予防と管理に関する基本的知識を問う
  • 感染予防と管理に関する設定状況における感染管理活動の展開能力や問題解決に必要となる論理的思考を問う

というもの。

小論文は

  • 看護に対する考え方、理論的思考を問う

というものでした。

入学試験の突破を目指すならば、過去問を入手して、出題傾向を知ることが大切です。

教育機関は学校説明会を開きますから、その時に過去問が配布されることが多いようです。

また説明会では、入試対策についての詳細な説明もあるようなので、聞き落とさないように参加しましょう。

各教育機関のWEBサイトには、学校説明会の日程や会場案内、過去問の配布の有無などが掲載されるので、必ずチェックしてください。

見事、合格したとします。

その後に学ぶ際のカリキュラムを説明しましょう。

他学科との共通カリキュラムが380時間、認定看護分野専門科目が195時間、特定行為研修区分別科目が61時間、演習・実習が195時間。

合計は831時間です。

つまり、入学後に831時間の教育を受け、認定審査(筆記試験と実習において一定の成績)に合格できた者が、感染管理認定看護師になれるのです。

ところで、先に「特定行為研修を組み込んだB課程」という言葉が出ました。

実は、2020年度から、認定看護師の新カリキュラムによる養成を開始しています。

それまでの教育で認定看護師を取得している人は、特定行為研修の修了によって「新たな認定看護師」へ移行できます。

これが日本看護協会の示すA課程です。

また、すでに特定行為研修が修了している現行の認定看護師は、事務手続きのみで移行が可能です。

ところで、新たな認定看護師へ必ず移行しなければいけない訳ではありません。

しかし、現行の認定看護師の新規認定は2029年で終了することになっています。

更新を望まなければ、これも1つの選択になるでしょう。

さて、感染管理認定看護師の資格ですが、認定後5年ごとに更新審査が実施されます。

これは、レベルが保持できているかを見極めるためです。

更新審査の受験資格として「5年間に看護実践時間が2000時間以上あること」「学会・研究会などへの参加や研究業績などが50ポイント以上に達していること」となっています。

ポイントとは、決められた研修プログラムに参加すると5ポイント、非常勤講師を行うと10ポイントという様に、取得すべきポイントが決まっていることを指します。

加算して50ポイント以上が条件です。

つまり、資格を得た後も、自己研鑽を積む必要があるというわけです。

まとめ

感染管理認定看護師の資格を維持していくためには、知識や技術のアップデートが必要です。

またポイントの取得も必須ですから、自己研鑽し続けることが大切になってきます。

その努力はとても大変かもしれません。

しかし、学び続けることでスタッフから信頼を得られるだろうし、看護師としての腕も向上することでしょう。

何より、遣り甲斐もついてきます。

このように書くと、良いことだらけですが、最後にデメリットを1つ。

感染症はいつ発生するかわかりません。

緊急に感染対策を講じる場合もありえます。

その時、休日だったり、用事のために休みを取っていたりする日もあるでしょう。

それでも、呼び出しがかかれば、感染管理認定看護師はすぐ病院に駆けつけて対策をほどこすことになっています。

それだけは、頭の隅にいれておいてください。

現在、数少ない感染症指定病院のスタッフが、新型コロナと戦っています。

感染症指定病院でない普通の病院にとって、新型コロナの患者を受け入れることは、とてもハードルが高いこと。

躊躇してしまうのは容易に想像できます。

だからこそ、もっともっと感染症専門医や、感染症に精通した看護師・スタッフが必要だと言えるのです。

新型コロナウイルスは、感染症法上の分類について2類相当の現状から、5類へ引き下げてもいいのでは!? という話もチラホラと出てきています。

5類になれば、保健所の介在なしに開業医が通常医療を提供できるというわけです。

つまり、一般の人々が通っている近所の病院やクリニックなどで、新型コロナの診察をしてもらえるようになるかも、という意味。

1番理解しやすいように説明すれば、インフルエンザと変わらないような診療になるかもしれません。

となれば、ますます感染症について見識のある医療従事者が、必要ではないでしょうか。

一方、看護師業界に目を向けると、医療現場に於いて高度化・専門化が進んでいます。

今後、看護師資格だけでは、心もとない時代がやってくるかもしれません。

自分の強みとなる資格を取得し、より高みを目指してみるのも良いのではないでしょうか。

今回は「感染管理認定看護師」を説明しました。

調べてほしい資格などがあれば、ぜひカンクルへご意見をお寄せください。

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